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・・・場所を異化する造形から、場所の記憶を掘り出し、場所と同化する造形へ。
インスタレーション作家、諏訪眞理子の変貌は、東京では久方ぶりの新作展からも如実に感じ取れる。諏訪が今回こだわったのは新作発表の場所、つまりは画廊そのものの所在地だった。それが画廊主の暮らしていた、建って約80年にもなる旧家を取り壊した跡地であったということに、強く心を勤かされたらしいのだ。
作品を決定づけたのは準備段階で入手した一枚のモノクロ写真だった。地域広報紙の名所旧跡の紹介欄に載ったという、取り壊す前の旧家が写っていたそれである。その写真は、広告看板用に使う塩化ビニールシートに引き伸ばされ、画廊奥の壁にはり付けられた。もちろん、これだけだったら、せいぜい当事者か関係者の郷愁の種にしかならなかっただろう”
そこで諏訪が取った普遍化の手法は、実に簡潔にして、卓技なものだった。手前の床に、黄と黒の警告標識を巻いた紙製の電柱や・マンホールを模した鉄のフタを配し、写真に写った道路の白線と接続する白いラインを引いたのである。手前の空間すなわち現在と、写真の表す過去との縫い目がほどかれた中に立つ時、部外者たる観客もまた、この場所の気配を抵抗なく共有することができるに違いない。59年生まれ。
諏訪展=8月6口まで同・渋谷区千駄ケ谷3の
7、秋山画廊
【三田晴夫】
毎日新聞 文化 批評と表現美術 陸根丙展 諏訪眞理子展 2005年(平成17年)8月1日
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